ロストワックスでジュエリー

 「ジュエリーを作ってます」
と言う話をすると
 「ああ、彫金なさっているんですか?」
とほとんどの人がお聞きになる。
 板金を使ってパーツの作成するときや、ロー付け作業と呼ばれる行程などはほとんど彫金と変わらない仕事ではあるが、しかし私の作品は鋳金なのである。地金を溶かして型に流し込み形を形成するロストワックス精密鋳造なのだ。
 作業工程を説明しても、彫金と比べると鋳金という言葉とジュエリーを結ぶイメージはなかなか湧いてこないらしい。そこで、いつも利用するのが「歯医者さん」。
 「あの歯の詰め物と同じ方法で作っています」
 なぜか、それで納得してくださる方は多い。原型製作の工程に違いはあるものの、鋳造の工程はまったくかわらないだろう。使用材料もほぼ同じ。実際、最近使い出した我が工房の原型埋没材はどこそかの歯科材料会社製のものである。


 チョーカー(K18・革)作:百田 潤子

 ジュエリー産業の世界においてもロストワックス製法は今や主体であると言っても過言でないだろう。フランスやイタリアのの超一流ハイ・ジュエリー・ブランド製のものでもロストワックス鋳造で作られたものは多数だ。もちろんこればかりではなく、伝統的彫金技法とこのロストワックスを上手に組み合わせて美しい作品展開をみせているのである。

 ジュエリーというと、高価な宝石を使ったものをイメージすることは少なくないだろう。しかし、同じ鉱物である金属の美しさは貴石と呼ばれる石たちと同じように素材独自ののパワーを持っている。

 坩堝の中で溶解した金属を眺めているといつもその神秘に魅入られてしまう。サラサラと美しい溶けたさまは筆舌に尽くしがたい。
 すでに何年も同じ作業を繰り返し体験しているのだが、今も相変わらずこの鋳造の瞬間はドキドキするのだ。金属というマテリアルに出会った幸運を感じる瞬間でもある。
  2002/08/01 百田 潤子